① T: You are visiting your American friend Tom, OK?

(クラスの状況の記述:黒板にTomの部屋のドアのビジュアルエイドがあり、訪問する役の生徒達はその黒板の横に立たせます。Tomの役の学生にはTomのポストイットを張っています)

生徒は黒板に貼ってあるビジュエルエイドのドアをノックします(注1)。

注1:日本ではドアのノックは2度ですが、アメリカではその倍前後で、2度だけのノックであれば少し奇妙な響きになりますので、そう言ったアイテムの自然さも生徒に気を付けさせます。

② S1 (Tom役): Who is it?
③ S2: Yoko and Takashi.

(クラスの状況の記述:先生がTom役の生徒にドアを開けるジェスチャーをさせます。先生が無言でその開けるジェスチャーを見せればその生徒に伝わります)

④ S1: Oh, Hi! How are you?
⑤ S3: Fine. And you?

これが1つのまとまったシーンですが、すんなりこのドアの所でのシーンのインターアクションが上手く行かない場合、他のグループの生徒に同じことを繰り返させます。生徒の英語の不自然な部分は、先生から、又は他の生徒からこまめにモデルを示しフィードバックをしていきます。又、指名された生徒から英語が出て来なかった場合、他の生徒にふりモデルとなる英語を引出し、その指名された生徒に戻し繰り返させたりもします。

(クラスの状況の記述:ビジュアルエイドでTomの部屋がかなり乱雑であり、靴が非常に汚れていることを示します。この時点ではTom, Takashi, Yokoの役は他の生徒になっています。ビジュアルエイドを提示したり、生徒をチェンジしたり等はdead timeを少なくする為にテキパキと行います)

⑥ S4: Hey Tom. Your room is very messy!
⑦ S5: And your shoes are very dirty, too!

⑥と⑦のセンテンスは生徒がクラスの準備の為に暗記して来たものですが、センテンスに含まれているグラマーの説明も理解して来ているのを前提でクラスを進めて行きますので、下の⑧のような応用的なセンテンスもビジュアルエイドを使って生徒から引き出して行きます。

⑧ S6: Your glasses are under the table.
⑨ T: Where are Tom’s glasses?
⑩ S7: They’re under the table.

⑨の先生の英語での質問は、⑧までのシナリオの流れから一時的に離れたもので、生徒に文法的な理解の確認をしたセンテンスです。ですので、“カンバセーションパートナー”の役割ではなく“クラスルームディレクター”として生徒に質問をしたという感じになります。⑩で答えている生徒は、「1つのメガネ」はglassesの複数形ですので、代名詞はtheyで受けるのであってitで受けるのは誤りであることを知っているかどうかテストされているわけです。

そして、再びシナリオの流れのあるコンテクストドリルに戻ります。

⑪ T: Ask Tom where his roommate is.

(先生の“クラスルームディレクター”としての英語での指示です)

⑫ S8: Where’s your roommate?

(クラスの状況の記述:ビジュアルエイドであるアメリカの地図があり、トラックに家具を積んでオレゴンに引越しして行ったビジュアルエイドを使います)

⑬ S9: He moved to Oregon.

(この時点でシナリオの流れから逸れて、「引っ越して行った」の他のバラエティーをビジュアルエイドを使ってチェックします)

⑭ S10: He moved up to Minnesota.
⑮ S11: He moved down to Mississippi.

以上がシナリオとそれをサポートするビジュアルエイドを使ってのドリルの大まかな流れですが、このシナリオドリルタイプのものはオーラルテストでも使います。

ここで注意して頂きたいことは、シナリオ的なティーチングプランは使いますが、このメソッドはドラマメソッド的に生徒に物語をそっくり丸暗記させる方法とは質が全く異なると言うことです。私がここでご紹介していますドリルのシナリオは、あくまでも先生の側が生徒から引き出したいと言う英文の羅列です。しかもそれらのセンテンスにシナリオ的なつながりがあります。生徒は、先生が導く物語がどんな展開を見せるのか事前には分かりません。先生が生徒に状況を与えて、それに反応する形で生徒に英語のクリエイトをさせると言うことですが、これは実際の英語でのコミュニケーションのパターンと同じです。実際の英会話でも、英語を使う状況があって、その状況の変化に応じて話者は英語をクリエイトしていくわけです。